本件は、被相続人と請求人の妻との土地の賃貸という身近なところで起こるであろう土地の賃貸借において、借地権という権利を認めるか否かが争われた事例です。
借地権が認められれば、更地として評価せずに底地として評価することになりますので、評価額は相当減額されることになります。借地権が認められない場合、更地評価となりますので、評価額が相当アップすることになります。
平成8年10月24日裁決 大阪・非公開
1.事例の概要
被相続人は、被相続人所有の本件土地上に、請求人の妻と共有で建物を建てて、住居及び妻の事業所として建物を使っていたところ、相続が発生したので、本件土地を請求人は、妻が借地権を有しているとして、底地として評価して申告しました。
ところが争いになり、審判所は被相続人と請求人の妻との土地の賃貸は認められないので、請求人の妻が借地権を有していたとする請求人の主張は採用できないとしました。
2.審判所の判断
請求人は、
- 相続開始前から、被相続人所有の本件土地の上に、妻と共有で店舗兼住宅を新築の上、住居及び妻の事業所として利用していること、
- 妻は、被相続人に対して権利金及び地代を支払っていたこと、
- 本件土地に係る固定資産税は妻が負担していたこと
から、本件土地は、妻が借地権を有しているので、底地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、被相続人と請求人の妻との賃借については、
- 賃貸借契約書を作成していない
- 権利金及び地代を支払っていたとは認められない
以上のことから賃貸借であるとは認められないので、請求人の妻が借地権を有していたとする請求人の主張は採用できない。
なお、固定資産税の負担については、被相続人と請求人の妻との賃借が親族間における使用貸借であると認められることから、民法第595条に規定する費用負担と解するのが相当であるとしました。