1. 借地非訟手続の活用

借地非訟事件借地の譲渡や建替えには、地主の承諾が必要ですが、地主が交渉に応じてくれないからといって借地の譲渡や建替えを、地主の承諾なしに行えば背信性が認められ、賃貸借契約が解除されることもあります。

そのような時には借地非訟手続があります。

借地非訟手続は裁判所が通常の訴訟手続きによらずに、簡易な手続きで、裁判所が裁判をしますが訴訟事件ではないので費用は安く同手続は長期に及ぶことはなく1年前後で終わります。

何を裁判するかですが借地契約の変更や借地権の売買などで地主と借地人との話し合いがうまくいかない場合に活用されています。

借地非訟事件には,次のような種類があります。

1.借地条件の変更

2.増改築の許可

3.借地契約更新後の建物再築許可

4.土地賃借権の譲渡又は転貸の許可

5.建物競売等の場合における土地賃借権の譲渡又は転貸の許可

6.建物及び土地賃借権譲受の許可

なお申し立ては、原則として地方裁判所になります。

大阪は第10民事部となります。

地主と借地人との争いを大きくしない方法として借地非訟事件がありますが、「紛争予防のために」という題で借地非訟手続きをすすめている記事がありますので掲載します。

紛争予防のために

借地権設定者の承諾又は借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可を得ずに、土地賃借権を譲渡又は転貸した場合、背信性が認められ、賃貸借契約を解除される危険が十分にあることを認識すべきです。

したがって、土地賃借権の譲渡又は転貸に当たっては、事前に借地権設定者と交渉をして、承諾を得られる努力をするとともに、もし借地権設定者の承諾が得られないという状況に至った場合には、借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可の申立てを行うという借地借家法に定められた手続きを踏むことがリスクを回避する上で得策です。

「借地借家紛争解決の手引」(新日本法規出版)より引用しました。

2. 借地条件変更の裁判手続き

借地条件を変更しようとしたが、地主の承諾が得られない場合の裁判手続についての記事がありましたので、掲載します。

借地条件変更の裁判手続き

 

木造平屋建てに限るとする借地条件を、3階建てコンクリート造りの建物に変更するためには、貸主の承諾を得られない以上、借地条件変更の裁判(借地借家170)をする必要があります。

 

1 借地非訟手続の概要

(1)借地非訟手続

建物の種類、構造、規模、用途を制限する特約は有効であり、これらの借地条件の変更について、貸主と借主間で協議が調わないときは、当事者はどちらからでも裁判所に借地条件の変更を求めることができます(借地借家17①)。

「この裁判手続では、非訟事件手続法が適用され(借地借家42)、職権探知主義(非訟49・53)が採られ、その審理は非公開とされます(非訟30)。

借地非訟事件は、借地権の目的たる土地の所在地を管轄する地方裁判所が管轄します(借地借家41本文)。ただし、当事者の合意に基づき、簡易裁判所が管轄することもできます(借地借家41ただし書)。

(2)鑑定委員会

裁判所は、借地非訟事件の裁判をする前に、特に必要がないと認める場合を除き、鑑定委員会の意見を聴かなければならないとされています(借地借家17⑥)。また、実際の手続において、鑑定委員会の意見に沿った裁判がなされることが多いようです。

また、裁判所は、鑑定委員会の意見を聴いたときは、その旨を当事者及び利害関係参加人に通知し、その陳述を聴かなければならないとされています(借地非訟事件手続規則8③)。

(3)裁判とその効力

借地非訟事件の裁判は決定によってなされます(非訟54)。借地条件変更の裁判は、借地条件を形成的に変更するものであり、条件変更を「許可」するものではありません。さらに、条件変更を認容する裁判において、一定の給付を命じることができますが、給付を命じる裁判は確定すれば裁判上の和解と同一の効力を有します(借地借家58)。

(4)不服申立て

非訟事件手続における終局決定は告知によって効力を生じますが(非訟56②)、借地条件変更等の申立てに対する裁判については確定しなければ効力が生じず(借地借家55②)、この裁判に対して、告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をすることができます(非訟66・67)。

2 借地条件変更の裁判の当事者「借地条件変更の裁判は、貸主、借主いずれかの申立てにより、他の一方当事者を相手方とします。

転借人がいる場合、転借人の申立てによって、転借地権の条件変更と合わせて借地権の条件変更の裁判をすることもできます(借地借家176)。

3 借地条件変更申立ての形式的要件

(1)借地条件変更申立てをするための形式的要件としては、借地権が存在すること及び「建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件」があることです。
なお、当事者間に協議が調わないことは、消極的要件にすぎず、申立時に積極的な主張は不要です。

(2)ここでいう「建物の種類」とは、居宅、店舗、倉庫など、建物の主たる用途からみた建物の種別です。
「建物の構造」は、建物の主たる部分の構成材料、屋根の種類及び階数による種別です。旧借地法における非堅固建物か堅固建物かの違いはここに含まれます。

「建物の規模」は、建物の高さ、床面積等、建物の大きさによる種別です。
「建物の用途」は、建物の用法に関する種別です。

借地上の建物をめぐる実務と事例(日本法規出版)より引用しました。

 

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