1. 長年倉庫などに使用しても、一時使用目的と判断(判例)

約20年余の期間、土地賃貸借契約に基づき、更新して倉庫・作業所の用に供していても一時使用目的であると判断された判例がありますので掲載します。

倉庫・作業所を建築・使用するために締結された土地賃貸借契約につき、約20年余の期間にわたり更新を繰り返していても一時使用目的であると認定された事例

(東京地判平6・7・6判時1534・65)

本件は、本訴原告反訴被告(原告)が、本訴被告反訴原告(被告)の兄Aから、A所有に係る本件土地を、倉庫、作業場等の建築敷地と長年の倉庫利用 一時使用目的と判断して賃借し、その後、同土地上に平屋建倉庫・作業場を建築し、これを倉庫・事務所・作業所として使用してきたが、Aから本件土地の贈与を受けて賃貸人たる地位を承継した被告が、賃貸借契約は既に終了したとして、原告に対して、本件土地の明渡しを求めるなどしたため、原告が、被告に対して、本訴において、本件土地について、建物所有「目的、期間30年とする土地賃借権を有することの確認を求めたところ、被告が、原告に対して、反訴において、本件土地の明渡しを求めた事例である。

裁判所は、

①本件土地は、A及び被告の父の遺産に代わるものとして、いずれは被告の居住用としてAから被告に贈与することが予定されていたこと

②Aらは、一度は原告らの本件土地賃借の申入れを断ったが、用地の確保に困っており一時貸しでも良いからとの原告側からの懇願に従って、一時貸しを条件に本件土地の賃貸に応じたこと

③契約期間が1年と短期間であること

④権利金・敷金等の金銭の授受がないこと

⑤原告において地主から明渡請求があった場合には速やかに原状回復及び明渡しをする旨の誓約書を差し入れていること

⑥原告が本件土地上に建築したのは組立ハウスであって保存登記を行っていないこと、⑦毎年、契約書を取り交わす形で期間1年とする賃貸借契約が更新されてきたこと

⑧被告において本件土地に自己の居宅を建築する予定であること

⑨原告は本件土地の代替地となる土地を取得していること

等の事情を認定した上、本件賃貸借契約が結果的には20年余りの長きにわたって継続してきたものではあるが、借地法の規定を潜脱する意図でAらにおいて本件契約を締結したものとは認められないから、本件土地賃貸借契約は一時使用目的であると判示して、本訴請求を棄却し、反訴請求を認容した。

「一時使用・使用貸借の契約実務」(新日本法規出版)より引用しました。

2. 土地の使用貸借契約の終了(判例)

亡母の死亡により、同人が庭の広い新しい家に住むという目的が終了したとして使用貸借契約の終了を認めた事例

東京地判平23・3・31(平20(ワ)33194)

証拠(甲9、乙12、X本人、Y本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件建物は、きれいで日当たりが良く庭の広い家に住みたいというBの希望を受けて、設計、建築されたものであり、Xとしても、実母であるBの上記希望をかなえるために、Yに対し、本件土地1を無償で使用することを承諾したものと認められる。

広い庭のある家

Yは、本件土地1の使用貸借は、普通建物所有を目的とする旨主張するが、使用貸借は、賃貸借とは異なり、専ら借主のみが利益を受ける契約であり、特殊な動機又は人的関係に基づくことが通常であることに照らすと、民法597条2項にいう「目的」とは、単に建物所有目的といった一般的抽象的なものではなく、契約成立当時における当事者の意思から推測される個別具体的なものと解するべきである。

Yは、本件建物の新築時のBの年齢や本件建物の構造等に照らせば、Xは、本件土地1の使用貸借が、本件建物の朽廃時まで存続することを了解していた旨主張する。

確かに、Xが、B死亡後の本件建物の存続を全く考慮することなく、本件土地1を使用貸借したとは考え難い。

しかしながら、他方で、YとXとの関係に照らして、B死亡後も、本件建物の朽廃時までという長期間にわたり、Yに対し、無償で本件土地1の使用を認めるつもりであったと解することはできず、本件土地1のうち本件建物が存在する範囲は、北側3分の1程度に過ぎないことも併せ考えると、B死亡後は、本件土地2の遺産分割の問題と併せて、改めて本件建物の土地利用権の設定について協議する意図であったと認めるのが相当である。

したがって、本件土地1については、Bの死亡により、同人が庭の広い新しい家に住むという目的に従った利用が終了したことから、使用貸借契約が終了したものと認められる。

※「借地借家紛争解決の手引き」(新日本法規)より引用

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