使用貸借

使用貸借に関連する裁決事例がありましたので掲載します。

建物の所有に係る共同相続人の評価対象地上の権利は、せいぜい使用賃借によるものと判断した裁決事例

(平成24年5月22日裁決・公開、名古屋)

裁決要旨

請求人らは、相続した本件土地の上に、本件被相続人及び他の共同相続人ら(本件被相続人ら)が所有する本件建物が存しているところ、本件土地の使用料は無償であるものの、本件建物が存する権原は、本件建物の所有を目的とする地上権である旨主張する。

建物の所有にかかる共同相続人の評価対象地上の権利しかしながら、親族間で土地の無償使用を強請る関係を地上権の設定と認めるためには、当事者が何らかの理由で特に強固な権利を設定することを意図したと認めるべき特段の事情が存在することを必要と解すべきであるところ、
①本件建物を本件被相続人らの共有とした理由からすれば、わざわざ本件被相続人にとって著しい負担となる無償の地上権を設定する必要もないこと、
②本件被相続人と当該他の共同相続人らとの間で、地上権を設定する場合に通常取るであろう行動が、取れたにもかかわらず、これを取っていないこと及び
③本件においては上記特段の事情も見当たらないことからすると、本件建物の所有に係る当該他の共同相続人らの本件土地上の権利は、せいぜい使用貸借によるものと見ざるを得ない。そして、本件建物の建築後、本件相続開始に至るまで、権利関係に変動があったことを認めるに足る証拠はないから、本件相続開始時点で、本件土地上に、当該他の共同相続人の地上権が存在していたとは認められない。

 

本件土地は使用貸借か否か!

本件土地は使用貸借か賃貸借かが争われた事例がありましたので掲載します。

(平成24年5月16日裁決・東京)

裁決要旨

請求人らは、本件土地に係る貸借契約については、本件被相続人と本件借地人の間で、相続開始前13年前に建物所有を目的とする土地貸借契約(本件貸借契約)が締結され、長期間地代が支払われていることなどから、賃貸借契約であり、本件土地は、借地権の設定された土地である旨主張する。しかしながら、
①本件貸借契約締結時の地代はその年度の固定資産税額を下回っていること、
②相続開始日前4年前の地代もその年度の固定資産税額を下回っていること、
③相続開始日前3年以降は地代の支払いがされていないこと等
の事実に照らすと、本件貸借契約における地代が使用収益に対する対価的意義を有するものであったとは認められないから、本件貸借契約は、本件被相続人が、親戚関係にあった本件借地人に対して、せいぜい本件土地の所有に必要な費用である固定資産税相当額程度を負担させて本件土地を使用させることを約した使用貸借契約であると認められる。

また、本件土地については、本件貸借契約が締結されていたと認められるところ、使用貸借は借主の死亡により終了するものであり、本件相続開始日前に本件借地人は死亡しているから、本件相続開始日において本件貸借契約に係る使用貸借は終了していると認められる。

そして、その後、本件相続開始日までに新たに借地権が設定されたと認められる証拠もないから、本件土地は借地権の設定された土地とは認められない。

(平24. 5.16 東裁(諸)平23-222)

 

使用貸借・借地権

当事者の一方が法人で、その一方が個人である場合、税務上の取扱いは、法人税の取扱いに準拠する。したがって相続財産としての借地権の評価を要するとする裁決事例

(平成16年9月10日裁決・熊本)

裁決要旨

使用貸借・借地権請求人らは、本件土地の貸借は固定資産税等相当額の地代の授受であるから、税法上無償とみなし、使用貸借に該当するので借地権の評価を要しない旨主張する。
しかしながら、個人間の土地の使用貸借に係る使用権の価額は零として取り扱う旨定めているところ、本件土地の貸借については、当事者の一方が法人であり、その一方が個人であることから、税務上の取り扱いは、法人税の取扱いに準拠することとなる。
そうすると、本件土地の貸借は、権利金等の授受がなされておらず、本件土地に係る地代の額が固定資産税等相当額であることから使用貸借と認められるところ、貸地人が法人である本件においては、使用貸借であっても税法上借地権が存在すると認めるのが相当であり、当事者から原処分庁に対して土地の無償返還に関する届出書が提出されていないのであるから、相続財産としての借地権の評価を要することになる。
したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。

(平16.9.10熊裁(諸)平16-5)

 

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