相続財産である借地権の扱いについて争いになった事例です。大半の借地権は、登記されているわけでもなく見落とされるケースもあるので要注意です。

本件は、相続人らが税理士を善管注意義務違反で訴えた事例です。

相続財産である借地権

東京地裁(平成21年9月25日裁決)

「判例から学ぶ税理士損害賠償責任 相続税編」(一般財団法人大蔵財務協会刊,2016.5.30)よりご紹介いたします。

1.主たる争点

相続財産である借地権相続財産として計上しなかったことが税理士の注意義務違反になるか?

2.前提事実
    1. 平成13年12月30日、Aが死亡し、Xらが相続人となった。
    2. 平成14年8月8日、Xらは、に対し、Aの遺産相続に基づく相続税の申告に関する一切の事務処理を委任した(以下「本件契約」という。)。
    3. Xらは、本件契約に基づき、に対し、合計355万9,500円を支払った。
    4. 平成14年9月17日、は、F税務署に対し、Aの遺産相続に基づく相続税の申告書を提出した(以下「本件当初申告」という。)。同申告書には以下※の内容が含まれている。
    5. その後、Xらは、F税務署から、本件当初申告における本件各問題点についていずれも不備があることを指摘され、平成17年6月29日、その指摘に基づいて、本件問題点②については、本件F土地の借地権の価額を1,065万1,200円とし、修正申告を行った(以下「本件修正申告」という。)。

 ※Aの相続財産として、F市所在の土地(以下「本件F土地」という。)上の建物および同建物内の家具一式を計上しながら、本件F土地の借地権を計上しなかった(以下「本件問題点」という。) 

3.原告Xの主張

本件当初申告において、Aの相続財産として本件F土地上の建物が計上されていることからすれば、同建物の敷地権たる本件F土地の借地権を計上しなかったことは明らかな見落としといえる。

4.被告Yの主張

Yは、Xらに対し、次のとおり話した。

Xらは、本件F土地所有者との間で、賃貸借契約を締結し、地代及び権利金等の支払いをしているので、本来「相続財産」として評価すべきである。

5.裁判所の判断

「Yは、本件F土地上の建物がXらの相続財産であることを認識していながら、同建物本件及び建物内の家具一式の価値のみを計上し、同建物の敷地である本件F土地の借地権を計上していないというのである」から、「税務の専門家として適正に相続財産を評価すべき注意義務に違反する行為であると言わざるを得ない。」

著者のコメント

1 裁判所は、相続税申告事務を受任した税理士は、税務に関する専門家としての高度の注意をもって処理すべき義務を負うとした上で、本件における税理士の当初申告の土地の評価、相続財産の申告漏れ、相続債務に税理士報酬、鑑定費用を含めた点はいずれも依頼者と税理士の契約の債務不履行であると認め、慰謝料を除き、Xらの請求を全面的に認めた。

2 本件当初申告の内容は、税務署から否認されることが予測される内容であったところ、Yは、否認のリスクについて説明したが、Xらが指示したものだと主張していますが、裁判所は、Yの主張を認めなかった。

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◆本件のテーマは税理士先生の注意義務違反についての判例ですが、誠実に仕事をするという事はどのような仕事、資格者であっても大事なことで、自戒の念も込めてこの判例を取り上げました。この事例を通じて、私もお客様のために真摯に業務に取り組んでいきたいと思います。

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