地代等が不相当になった場合の地代等増額請求権の要件は、借地借家法11条によれば3つの場合が定められています。
①公租公課増減による場合
②地価の上昇または低下、その他経済事情の変動による場合。
③近傍類似の土地の地代と比較した場合、これらの事実によりさらに地代等の増額請求ができると解されています。
以下において地代増減額請求の判例をご紹介致します。
地代増額請求 最判平3・11・29(判時1143・52、判タ805・53)
(事 案)
所有建物をXに賃貸していたYが、現行賃料の改定時期から1年半程度の期間しか経過していないのに、Xに対し、賃料(月額)を現行の40万円余りから60万円へと増額する旨の意思表示をして、その適正賃料の確認を求めた。
一審は、鑑定によれば適正賃料の額は53万4,700円であると認められるが、現行賃料との開差はさほどのものではなく、本件増額請求を肯認すべきほど現行賃料が不相当のものになったとは認められないとして、Yの請求を棄却した。原審は、賃料増額請求には、現行賃料の改定時期から相当期間が経過していることが必要で、本件における相当期間は2年と解すべきところ、本件増額請求の時点では、現行賃料の改定時期から2年を経過していないから、本件建物の賃料は、右の2年を経過した日以後、右の鑑定額に増額されているとして、Yの請求をその限度で認容した。
(判 旨)
1 建物の賃貸人が借家法7条1項の規定に基づいてした賃料の増額請求が認められるには、建物の賃料が土地又は建物に対する公租公課その他の負担の増減、土地又は建物の価格の高低、比隣の建物の賃料に比較して不相当となれば足りるものであって、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過しているか否かは、賃料が不相当となったか否かを判断する一つの事情にすぎない。したがって、現行の賃料が定めれれた時から一定の期間を経過していないことを理由として、その間に賃料が不相当となっているにもかかわらず、賃料の増額請求を否定することは、同条の趣旨に反するものといわなければならない。
2 これを本件についてみると、原審は、本件増額請求に係る昭和63年5月20日の時点における賃料は53万4,700円が相当であると認めながら、現行の賃料が定められた昭和61年10月1日から右の時点まで2年を経過していないことのみを理由に、Yの右の時点における賃料の増額請求を否定しているものであっ て、右の判断には借家法7条1項の解釈適用を誤った違法があるといわなければならない。
3 そうすると、Yの請求は、昭和63年5月20日以降の本件建物の賃料が53 万4,700円であることの確認を求める限度で認容すべきところ、Yから上告がない本件において、右と異なる原判決をXに不利益に変更することは許されない。
※上記の内容は借地借家紛争解決の手引(新日本法規出版刊)を引用しました(P412、6)