借地契約における地代(賃料)とは
借地契約において、地代(賃料)とは、土地の使用・収益の対価、土地を一定期間使用するについて支払われる賃借料の事です。
地代の額は、地主にとっても借地人にとっても重大な関心ごとであり、地代の増減をいつ、いくら、どのような要件でどのようにして行うかは当事者にとって重要な事です。
やり方によっては揉め事をつくってしまいますので、注意深くする必要があります。
借地借家法は、地代等増減請求権の制度を採用していますのでご紹介します。借地借家法11条1項(地代等増減額請求権)には下記のように記載されています。
◆借地借家法第11条(地代等増減請求権)
地代又は土地の借賃(以下「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
即ち、現行地代が不相当になる場合の例示は下記の通りです。
b.土地価格の高低その他の経済事情の変動
c.近傍同種の土地の地代との比較
d.その他の事情(判例)
地代をめぐる争い
地代の増額の請求がされると、当事者で協議されますが、協議が調わない場合には、訴訟を起こす前に原則として調停を利用することになります(調停前置主義)。
さらに、地代をめぐる争いは、当事者の合意が得られなければ訴訟によって解決することになります。
その折には上記の現行地代が不相当か否かを検討した不動産鑑定による地代の鑑定書が必要になってきます。
又、建物の家賃の増減についても借地借家法 第32条1項(借賃増減請求権)において下記のように記載しています。
◆借地借家法 第32条(借賃増減請求権)
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
32条1項の不相当性の例示を列挙すれば、下記の通りです。
b. 土地・建物価格の高低その他の経済事情の変動
c. 近傍同種の建物の家賃との比較
d. その他の事情(判例)
賃料増減請求に関する最高裁判所の判断基準
最高裁平成3年11月29日判例時報1443号
『建物の賃貸人が借家法7条1項の規定に基づいてした賃料の増額請求が認められるためには、右建物の賃料が土地または建物に対する公租公課その他の負担の増減、土地または建物の価格の高低、比隣の建物の賃料に比較して不相当となれば足りるものであつて、現行の賃料が定められた時から一定の期間が経過していないからといつて右賃料の増額請求を否定することは同条の趣旨に反するものといわなければならない。』
最判平成15年6月12日(民集57 巻6号、判時 1826 号47 頁、判タ 1126 号)
(イ) 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約の当事者は、従前の地代等が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、借地借家法11条1項の定めるところにより、地代等の増減請求権を行使することができる。これは、長期的、継続的な借地関係では、一度約定された地代等が経済事情の変動等により不相当となることも予想されるので、公平の観点から、当事者がその変化に応じて地代等の増減を請求できるようにしたものと解するのが相当である。この規定は、地代等不増額の特約がある場合を除き、契約の条件にかかわらず、地代等増減請求権を行使できるとしているのであるから、強行法規としての実質を持つものである。
(ロ) 他方、地代等の額の決定は、本来当事者の自由な合意にゆだねられているのであるから、当事者は、将来の地代等の額をあらかじめ定める内容の特約を締結することもできるというべきである。そして、地代等改定をめぐる協議の煩わしさを避けて紛争の発生を未然に防止するため、一定の基準に基づいて将来の地代等を自動的に決定していくという地代等自動改定特約についても、基本的には同様に考えることができる。
(ハ) そして、地代等自動改定特約は、その地代等改定基準が借地借家法11条1項の規定する経済事情の変動等を示す指標に基づく相当なものである場合には、その効力を認めることができる。しかし、当初は効力が認められるべきであった地代等自動改定特約であっても、その地代等改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法 11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、同特約の適用を争う当事者はもはや同特約に拘束されず、これを適用して地代等改定の効果が生ずるとすることはできない。また、このような事情の下においては、当事者は、同項に基づく地代等増減請求権の行使を同特約によって妨げられるものではない。
最判平成16年6月 29 日(判時 1868 号、判タ 1159 号)
しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(イ) 前記確定事実によれば、本件各賃貸借契約は、建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約であるから、本件各賃貸借契約には、借地借家法11条1項の規定が適用されるべきものである。
本件各賃貸借契約には、3年ごとに賃料を消費者物価指数の変動等に従って改定するが、 消費者物価指数が下降したとしても賃料を減額しない旨の本件特約が存する。しかし、借地借家法11条1項の規定は、強行法規であって、本件特約によってその適用を排除することができないものである。
したがって、本件各賃貸借契約の当事者は、本件特約が存することにより上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使を妨げられるものではないと解すべきである。