底地の有効活用
底地の特性
底地は一般的に市場での流通性が乏しく、更地のように右から左へと売却することはできません。
何故なら、底地を手に入れても、その土地を自由に利用することが出来ず、地代のみを期待することになるからです。しかも底地の地代は一般的に安く収益を期待できないのが現状です。
例えば実例として(H30.3現在)
◆東大阪市○丁目 地代269円/月 推定地価 236,000円/㎡
利回り1.4% (地積400㎡超、近隣商業地域300%)と、
とても低い地代となっています。
底地はほとんどが借地権者が買い取るか、底地の所有者が借地権付き建物を買い取るか、底地専門の買い取り業者が買い取るか、又は第三者が底地と借地権付き建物を同時に買い取るかのどちらかで土地は流通していきます。
しかし底地は借地人の方に土地を利用して頂いて初めて成り立つものであり、なおかつ使用期間が長期に及ぶと共に借地人の方との煩わしい人間関係、地代交渉等による縺(もつ)れ等が長期に及ぶ傾向にあります。
地代の改訂もこまめに行わないと、地代は相場と大幅に乖離することもしばしばです。
そうなってくれば、相続税の申告に当たり、底地の物納をしようとしても、物納が出来ないというケースも出てきます。
底地の解決方法
1.底地(貸宅地)を売却する場合
底地(貸宅地)を売却することは底地(貸宅地)を解決する手法の1つになります。
底地をお持ちの地主さんは、先祖から受け継いだ土地を守るということに苦心されていることと思いますが、先祖から受け継いだ底地(貸宅地)において借地人とのトラブルに悩む地主の方も少なくないようです。
相続税の納税資金や資産整理等で底地(貸宅地)を売却しようと考える方もおられます。又、借地人とのトラブルが原因で協力し合って土地を売却するのができない場合には不動産業者への売却という考え方もあると思います。この場合借地人に売却の同意は不要で、地主が単独で動いて底地(貸宅地)を処分することができます。
不動産業者に底地を売却するときの底地(貸宅地)の価格は借地人に売却する場合に比べて安くなります。不動産業者は、この底地(貸宅地)を当該借地人に売却したいと考えていますので、底地(貸宅地)価格は低位な価格になります。一般的に売却を急ぐ場合、底地が数多くあって1個人や1社に売却するには物件が多数ある場合に不動産業者に売却しているようです。
底地(貸宅地)を不動産業者に売却する場合、価格の面では安くなりますが、早く売却が可能というメリットがあるからです。
2.底地(貸宅地)を借地人に売却する場合
底地(貸宅地)を借地人に売却する場合は他の方法に比べて手間はかかりますが、一番高値で底地(貸宅地)を売却する方法です。
しかしながら、底地(貸宅地)を借地人に売却したいと思っていても、底地(貸宅地)は、借地人側に大きな権利が存し、なおかつ地代が安くすぐに底地のみをすぐに売却しようとしても売れません。又借地期間も長く、仮に借地期間が満了しても土地の返還はほぼないことを考えれば、底地(貸宅地)の購入の話がでても借地人に購入意思や資金がなければこの話は絵に描いた餅になってしまいます。
そのため底地(貸宅地)の売却にあたっては売却価格の調整に時間がかかるというデメリットがあります。だが、先ほどもいいましたが、底地(貸宅地)を借地人に売却するという方法は、一番高値で底地(貸宅地)を売却する方法なのです。
底地(貸宅地)を借地人に売却するにあたり、いくらぐらいで売却可能か否かを値踏みしておくことは大切です。借地人と売却価格の交渉をするにあたり不動産鑑定士の作成した底地(貸宅地)の鑑定書を取って借地人と交渉することをおすすめします。
※借地人が底地を買うことによって、その土地は更地になり、借地契約の厳しい建築条件がなくなります。例えば、「木造」しか建てられないという条件がなくなり、鉄筋コンクリートを建てる事も可能ですし、店舗にしたりして、有効利用が可能です。
3.底地(貸宅地)を借地権と共に共同で第三者に売却する場合
底地(貸宅地)を借地権と併せて第三者に売却する方法は、底地(貸宅地)や借地権のデメリットが解消される結果、底地(貸宅地)と借地権を購入した第三者は完全所有権となる土地を購入することになるため、底地(貸宅地)を単独で不動産業者や第三者に売却するよりも高く底地(貸宅地)を売却することが可能になります。安く買い叩かれることもなくなります。
但し、物件の売却にあたり不動産業者又は第三者(法人・個人)との価格交渉や底地(貸宅地)と借地権の収益の配分について話し合い等が必要になってきますし、時間もかかるケースも出てくる可能性はありますが、物件を一括売却することで長い間苦しんでいた不動産の管理や地代の値上げ交渉等が解消し、土地を現金化し、相続税の資金確保や投資資金の確保等が出来るというメリットがあります。
なお、物件の売却に伴う売却価格や売却後の底地(貸宅地)と借地権の収益の配分について不動産鑑定士の作成した鑑定書により値交渉や収益の配分について話し合いをされることをおすすめします。鑑定書をつくることにより売却価格の客観性が増し、収益の配分の揉め事も少なくなり、底地の円満解決につながります。
4.底地と借地権を交換する方法により土地を有効活用する方法
本件は、地主の所有する底地と借地人が所有する借地権を等価で交換して、各々が土地の所有権を取得する方法です。交換の要件を満たせば、「固定資産の交換の特例」とみなされて、譲渡所得は発生せず、コストが抑えられるというメリットがあります。又、底地(貸宅地)の所有者も借地権者も、各々底地と借地権を交換することで完全所有権を取得し、土地の有効活用が可能になると共に資金運用のための担保価値も高くなります。
底地(貸宅地)と借地権の交換については等価交換の要件にもよりますが、色々なやり方があります。不動産鑑定士等の専門家の意見を求めることが良いと思います。
さらに交換することになれば、底地と借地権の価格等の交換要件を満たしていることを証明するためにも不動産鑑定士による鑑定書をつくっておくことによって、土地の交換の否認を防ぐことが必要かと思います。是非とも底地と借地権の交換のための鑑定書をつくることをおすすめします。
何故なら、「固定資産の交換の特例」の要件が厳しく設定されているからです。
例えば
- 1.交換取得土地は棚卸資産だから、固定資産の交換の特例の適用はないと認定されるケース
- 2.交換直前の用途と同一の用途に供したとは認めれらないので固定資産の交換の特例の適用要件を欠いたとされるケース
- 3.交換により所得した土地は、交換の相手方が取得してから1年未満であるため交換の特例の適用はないとされるケース
4-2 底地と借地権をディベロッパーの建物と交換する
前項の借地権と底地(貸宅地)の交換の応用です。ディベロッパー側がマンションを建築し、借地人の持つ借地権と地主の所有する底地(貸宅地)の価格に応じて建物と等価交換し、借地人と地主が借地権と底地(貸宅地)の価値に見合う土地とマンションの各部屋を取得する方法です。この方法は借地権と底地(貸宅地)がばらばらに分かれているよりも土地を有効活用できると共に借地人・底地(貸宅地)の地主も共に譲渡所得税がかからず、かつ、また資金を必要とせずに土地と建物を自己所有(持分)できるメリットがあります。
この方法による交換については税務の専門家と不動産鑑定士等の専門家の意見を求めることが大切です。
さらに実際に等価交換することになれば借地権と底地(貸宅地)と建物との交換条件を満たすことを証する書類作成のために不動産鑑定士による鑑定書を作っておくことをおすすめします。