使用貸借と貸宅地

当事者の一方が法人で地代の授受はなく無償であっても、本件土地の評価は貸宅地とするのが相当とする裁決事例がありましたので掲載します。

(平成20年6月2日裁決・沖縄)

裁決要旨

積み木の家のイラスト請求人ら鑑定評価は、A土地を使用借権が付着した宅地として鑑定評価し、原処分庁は、貸宅地として評価している。ところで、「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和48年11月1日付直資2−189、直所2−76、直法2−92。以下「使用貸借通達」という。)においては、建物の所有を目的として使用貸借により土地を借り受けている場合においては、借地権の設定に際し、その設定の対価として権利金等を支払うなど借地権の取引慣行のある地域においても、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う旨定めているところであるが、使用貸借通達の前文からも明らかなとおり、この通達の取扱いは、個人間の貸借関係の実情を踏まえて定めたものであるから、当事者の一方が法人である場合のその一方の個人については、法人税の課税との整合性を図るため、使用貸借通達による取扱いではなく、原則として、法人税の取扱いに準拠して取り扱うこととしている。

そして、法人税法上の借地権の設定には、土地の賃貸期間、地代の額等についての明確な取決めをしないで若しくは使用貸借の名の下に他人に建物等を建てさせた場合も含まれるものと解されており、法人税基本通達13−1−3《相当の地代に満たない地代を収受している場合の権利金の認定》において、通常収受すべき権利金を収受せず、しかも、その収受する地代の額が法人税法施行令第137条《土地の使用に伴う対価についての所得の計算》に規定する相当の地代の額に満たないときは、原則として借地権利金の認定課税を行うことを明らかにしており、その後、土地の借主が借地権を有するものとして取り扱われる。

ただし、たとえ法人間あるいは法人を一方の当事者とする土地の賃借であっても、それが現実に土地の使用貸借であって、当

該貸借については借地借家法の適用がないことを当事者双方が十分承知しているものであるときには、税務上もその当事者の意図するところに従って課税関係を処理することが自然であるとの考えから、法人税基本通達13−1−7《権利金の認定見合わせ》において、当事者の一方又は双方が法人の場合にも土地の使用貸借があり得るとの立場に立って、当事者が連名で、将来借地を無償で土地所有者に返還する旨を無償返還届出書により税務署長に届け出ることを条件に、権利金の認定課税は行わないことを併せて明らかにしている。

貸宅地とする評価が相当これらの取扱いについては、当審判所においても、土地の貸借関係の実態に沿ったものであり、相続税法及び法人税法の趣旨に照らしても相当なものと認められ、これを本件についてみると、甲は、被相続人からA土地を借り受けるのに際し、権利金及び地代の支払いも行ったことがなく、また、税務署長に対する無償返還届出書の提出もされていないことから、被相続人に係る相続開始時には甲が借地権を有していたものとみるのが相当であり、A土地を貸宅地として財産評価基本通達等に基づいて評価した原処分庁の評価方法は、相当であると認められる。(平20. 6. 2 沖裁(諸)平19-6)

使用貸借と借地権について

被相続人と法人との土地の賃貸関係について争いになった事例がありましたので掲載します。

被相続人と法人との土地の賃貸関係についての借地権課税が問題になった裁決事例

(平成9年2月17日裁決・大阪)

裁決要旨

被相続人とA社との間における本件土地の貸借関係は、昭和33年から相続開始日まで、
(1)両者間において権利金及び地代の授受はなかったこと、使用貸借・借地権(2)A社は本件土地の公租公果を全額負担していたこと、
(3)A社の貸借対照表には本件土地の借地権に関する記載がないことなどを併せ考えると、
本件土地の貸借関係の実体は私法上の使用貸借であると認められなくもないが、私法上においては、法人が本来営利追及を目的として設立されるものであり、その活動はすべて合理的な経済人としての立場から行われるべきものとの考え方から、前記(1)、(2)及び(3)の事実には関係なく、本件土地の貸借が使用貸借の名の下にA社に建物を建築させた場合であっても、借地権相当額の認定課税が行われていたと認めるのが相当であるから、A社には本件土地の借地権相当額が存することとなり、本件土地は借地権の設定されていた土地として評価すべきである。(平 9. 2.17大裁(諸)平 8-58)


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