1. 借地上の建物が老朽化のため堅固建物へ変更は可能か!
建物が相当老朽化しているので、堅固建物所有を目的に条件変更できるかという判例がありましたので、掲載します。
借地上の建物が相当老朽化している場合、堅固建物所有目的への変更は認められるか
(大阪高決平3・12・18判タ775・171)
判旨
本件借地権は、近い将来、建物の朽廃により消滅する見込みがあること等、諸事情を総合して、非堅固建物所有目的から堅固建物所有目的への条件変更は相当ではない。
事案の概要
Yらの父Aは、Xに対し、昭和26年7月20日作成の公正証書により、以下の条件で、本件土地を賃貸した(以下「本件借地契約」という。)。
・借地期間:昭和26年7月1日から昭和46年6月末日まで20年間
・用途:木造スレート葺き工場用建物の敷地
・解除要件:あらかじめ貸主の証書による承諾がない限り、本件土地を前記用途以外に使用すること、本件土地上の建物を債務の担保に供することはできず、違背したとき、及び賃料の支払で一度でも遅滞したときは、無催告で借地契約を解除できる。第一審では、Xの借地条件変更の申立てを認めたため、Yらが即時抗告したものである。
裁判所の判断
本決定は、以下のとおり述べて、第一審決定を取り消し、堅固建物への変更申立てを棄却した。
まず、Yらが主張する争点である本件建物の朽廃による借地権の消滅(①)については、本件建物が建築後50年以上経過した木造スレート葺き工場であり老朽化していることは認めるが、朽廃に至っていないとして、朽廃による借地権消滅の主張は認めなかった。
また、無断増改築、無断担保設定、賃料不払、いずれの債務不履行による借地契約の解除(②)についても、理由はなく認めなかった。
そして、裁判所は借地権があることを前提に、以下のように借地条件の変更について判断した。
本件土地は、従前は工場地帯であり、中小規模の住宅が混在する地域であったが、近年は堅固な建物であるマンション建築が盛んである。しかし、本件建物は、昭和11年頃に建築されたもので、現実にはかなり老朽化していて、近い将来朽廃する見込みであること、本件借地契約における借地期間は相当長期になっていること、本件土地はもともと工場用建物の敷地として非堅固建物所有目的とする特約があること、本件建物朽廃により借地契約が終了する見込みであるのに、堅固建物を建築すれば借地期間が30年となり、更に30年後には更新される見込みであること等の事実から、非堅固建物の所有目的である本件土地の借地権を、堅固建物の所有目的とする借地権にその借地条件を変更することは相当ではない。
よって、Xの本件借地条件変更の申立ては認められない。
借地上の建物をめぐる実務と事例(新日本法規出版)より引用しました。
2. 建物の朽廃と借地権の消滅
建物の補修に新築同様の費用が必要であるので、本件建物は建物としての社会的、経済的効用は失っている。
よって朽廃と認められるという判例がありましたので掲載します。
構造部分に全面的な補修を必要とする借地上の建物は朽廃しているか
(東京高判平5・8・23判時1475・72)
判旨
本件建物は、建築後約40年が経過しており、全体的に経年による劣化が進んでいるほか、無人のまま長年放置され、保守管理も不十分であったことから、その構造部分にほぼ全面的な補修を行わなければ使用できない状況であり、その補修には新築同様の費用が必要であると推認される。そうすると、本件建物は、既に建物としての社会的、経済的効用を失っており、朽廃が認められる。
裁判所の判断
本判決はおおむね以下のとおり判示し、借地権の消滅を認めた。本件建物は、建築後約40年という長期間が経過しており、全体的に経年による劣化が進んでいるほか、無人のまま長年放置され、さらに、元6畳の和室の一部を解体撤去して4畳の和室にした際の補修が十分されないなど保守管理が不十分であったことから、基礎、土台、柱及び屋根といった構造部分にほぼ全面的な補修を行わなければ使用できない状況に至っていることを考慮すると、その補修には新築同様の費用が必要であると推認される。
そうすると、本件建物は、遅くとも当審における口頭弁論終結時までには、既に建物としての社会的、経済的効用を失うに至り、朽廃しているので、本件借地権も消滅したと認められる。
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