使用貸借と借地権について

被相続人と法人との土地の賃貸関係について争いになった事例がありましたので掲載します。

被相続人と法人との土地の賃貸関係についての借地権課税が問題になった裁決事例使用貸借・借地権

(平成9年2月17日裁決・大阪)

 

裁決要旨

被相続人とA社との間における本件土地の貸借関係は、昭和33年から相続開始日まで、
(1)両者間において権利金及び地代の授受はなかったこと、
(2)A社は本件土地の公租公果を全額負担していたこと、
(3)A社の貸借対照表には本件土地の借地権に関する記載がないことなどを併せ考えると、
本件土地の貸借関係の実体は私法上の使用貸借であると認められなくもないが、私法上においては、法人が本来営利追及を目的として設立されるものであり、その活動はすべて合理的な経済人としての立場から行われるべきものとの考え方から、前記(1)、(2)及び(3)の事実には関係なく、本件土地の貸借が使用貸借の名の下にA社に建物を建築させた場合であっても、借地権相当額の認定課税が行われていたと認めるのが相当であるから、A社には本件土地の借地権相当額が存することとなり、本件土地は借地権の設定されていた土地として評価すべきである。

(平 9. 2.17大裁(諸)平 8-58)

 

借地権の要件、使用貸借の要件

借地権の使用貸借の要件について掲載している裁決事例がありましたので掲載します。
借地権なのか使用貸借なのかによって大きく評価は異なります。
注意すべきことが裁決事例の中にたくさん含まれています。

住居及び事業所として使用していた場合の底地の評価

(平成8年10月24日裁決・大阪)

事例の概要

使用貸借、借地権、底地

被相続人は、被相続人所有の本件土地上に請求人の妻と共有で建物を建てて、住居及び妻の事業所として建物を使っていたところ、相続が発生したので、本件土地を請求人は妻が借地権を有していると判断して、底地として評価して申告したところ、争いになった裁決事例

 

裁決要旨

請求人は、

(1)相続開始前から、被相続人所有の本件土地の上に、妻と共有で店舗兼住宅を新築の上、住居及び妻の事業所として利用していること、
(2)妻は、被相続人に対して権利金及び地代を支払っていたこと、
(3)本件土地に係る固定資産税は妻が負担していたことから、

本件土地は、妻が借地権を有しているので、底地として評価すべきである旨主張する。

しかしながら、被相続人と請求人の妻との貸借については、

(1)賃貸借契約書を作成していないこと、
(2)権利金及び地代を支払っていたとは認められないことから賃貸借であるとは認められないので、請求人の妻が借地権を有していたとする請求人の主張は採用できない。
なお、固定資産税の負担については、被相続人と請求人の妻との貸借が親族間における使用貸借であると認められることから、

民法第595条に規定する費用負担と解するのが相当である。(平8.10.24大裁(諸)平8-16)

※民法第595条

1.借主は、借用物の通常の必要費を負担する
2.第583条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

※必要費とは目的物の保存・管理・維持に必要とされる費用のことで、本条にいう「通常の必要費」とは、不動産の固定資産税などの公租公課や借用物の現状を維持するのに必要な修繕・補修費などをいう。

 

借地権は生前対策が必要

借地権にも相続税が課税されます。借地権の生前対策の必要性

そのままの状態にしておくのではなく借地権にも生前対策が必要ですよ、という記事がありましたので、掲載します。

 

相続税額は、宅地価格に借地権割合の80%をかけて計算されます。

その際には、借地契約の更新料も建替え承諾料も差し引くことはできません。

したがって、土地の間口が広い場合は、固定資産の交換(底地と借地権の交換)をされたらいかがでしょうか。

多くの場合、更新料は更地価額の2%~4%前後、建替え承諾料は更地価額の5%~6%前後です。

生前対策としては、次のことが考えられます。

 

①地主と借地人が一緒になって底地・借地権を売却し、路線価の安い土地を買う。

②地主と借地人が底地と借地権を交換して、各自が独立した財産を手に入れる。

③地主と借地人が共同ビルを建て、一部を各自の居住用に、一部を貸家にして家賃収入を得る。

④地主に借地権を買い取ってもらう。

⑤借地人が地主に借地権の一部を売却して、その資金で借地上に建物を新築する。

 

なお、評価通達では宅地価格に借地権割合を乗じますが、その評価額が時価を上回る場合は、鑑定評価では将来発生する更新料を控除しますので、鑑定評価をとることをお勧めします。

「財産評価の実際」(プログレス刊)より引用しました。


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