増改築等禁止特約に違反して信頼関係を破壊するおそれがあると認められる修繕とはどのようなものか
(東京地判平27・5・13(平24(ワ)23294))
事案の概要
貸主Xと借主Yは、Xが所有する土地(以下「本件土地」という。)について、平成3年5月30日、建物所有目的で、期間を20年、Xの事前の承諾なく借地上の建物につき増新築・改築大修理等を行った場合にはXは無催告解除ができるとの特約付きの借地契約(以下「本件借地契約」という。)を締結した(法定更新)。Yは、本件土地上に建物を建築した(以下「本件建物」という。)。
平成21年8月頃、Yは、事前にXの承諾を得ずに本件建物の西側壁面及び西側壁面に近接する北側壁面の一部、南側壁面の一部の合計約19.146㎡と、本件建物の2階部分の屋根及び1階の一部の合計面積約44.03㎡(屋根全体の面積は約112.49㎡)を補修した(以下「本件工事」という。)。
そこで、Xは、Yに対し、平成21年8月28日付の書面で、本件借地契約を解除する旨の意思表示を行い、建物収去土地明渡しを求めて訴えを提起した。
裁判所の判断
裁判所は、以下のとおり判示して、YがXに無断で行った本件工事について信頼関係を破壊するものではないとして、解除を認めず、請求を棄却した。
本件工事は、いずれも本件建物の駆体の取替えに至らず、雨漏りの補修等、通常の利用上、相当な範囲にとどまる。
借地契約の特約において、増新築、改築大修繕を行うときはXの許諾を必要とすると定めている趣旨は、増改築工事により本件建物の耐用年数が大幅に延長され、借地権の存続期間に影響を及ぼすことを避ける点にあると解されるところ、認定事実によれば、本件においてYが行った本件工事は、本件建物の耐用年数を大幅に延長させ、借地権の存続期間に影響を及ぼす程度のものということはできない。
以上のことからすると、Yは、本件建物につき、Xに無断で壁面及び屋根部分の補修工事を行ったが、貸主に著しい影響を及ぼさず、貸主に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないことから、Xが行った本件借地契約の解除は無効である。
「借地上の建物をめぐる実務と事例」(新日本法規出版)より引用しました