底地の価格
底地の価格は、借地権の付着している宅地について、借地権の価格との相互関連において借地権設定者(地主様)に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものです。
借地権設定者に帰属する経済的利益とは、当該宅地の実際支払賃料から諸経費等を控除した部分の賃貸借等の期間に対応する経済的利益及びその期間の満了等によって復帰する経済的利益の現在価値をいいます。
なお、将来において一時金の授受が見込まれる場合には、当該一時金の経済的利益も借地権設定者に帰属する経済的利益を構成する場合があることに留意すべきです。
底地の価格は、地代徴収権に相応する価格のほかに将来見込まれる名義書替料、更新料、増改築等承諾料等の一時金の経済的利益及び借地権が消滅し完全所有権に復帰することによる当該土地の最有効使用の実現の可能性、市場性及び担保価値の回復等による経済的利益を加味して形成されるものです。
なお、建物の種類、構造、規模又は、用途を制限する旨の借地条件がある場合において、これらの借地条件を変更することによって、借地権者にとっては、より効用の高い利用が可能となる一方、借地権設定者にとっては借地期間の長期化等により、更地復帰の可能性が減退することも考えられます。
このため、条件変更承諾料や増改築承諾料については、条件変更や増改築等により実質的な借地期間が長期化し、完全所有権に復帰するまでの期間が長期化することにより底地価格を低下させる要因となる場合もあることに留意が必要です。
底地の鑑定評価額
底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定します。
この場合においては、下記(ア)から(キ)までに掲げる事項(定期借地権の付着している宅地の評価に当たっては、(ア)から(ケ)までに掲げる事項)を総合的に勘案します。
また、底地を当該借地権者が買い取る場合における底地の鑑定評価に当たっては、当該宅地又は建物及びその敷地が同一所有者に帰属することによる市場性の回復などを即応する経済価値の増分が生ずる場合があることを留意します。
(イ)借地権の態様及び建物の残存耐用年数
(ウ)契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間
(エ)契約にあたって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
(オ)将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
(カ)借地権の取引慣行及び底地の取引利回り
(キ)当該借地権の存する土地に係る更地としての価格又は建付地としての価格
(ク)借地期間満了時の建物等に関する契約内容
(ケ)契約期間中に建物の建築及び解体が行われる場合における建物の使用収益が期待できない期間
底地価格の種類
底地価格を求める場合、借地人に譲渡する場合と、第三者に譲渡する場合の2通りが考えられます。
底地を借地人に譲渡する場合には、借地権者は底地と併合することによって、今まで借地条件により制約されていたものがなくなることにより、土地は自由に使え、かつ市場性・担保価値も回復することになります。
また、底地を第三者に譲渡する場合は、底地の市場価値は相当低くなると考えられます。なお、底地の第三者への譲渡は、当事者間の取引に比べ皆無に近いと考えられます。
底地の価格は、更地の価格に比べてやや複雑な価格形成要因を持っていますので、底地の価格を相手(買主)に一言で説明することは少し難しく、当事者が争っている場合には、なおさら難しいと言わざるを得ません。
従って、底地の価格を把握するに当たり、不動産鑑定士の作成した不動産鑑定書を活用することをお勧めします。
弊社の不動産鑑定書は、底地の実状を示す情報を分りやすくまとめていますので、弊社の作成した不動産鑑定書を活用頂ければ、皆様の問題解決に役立つと自信を持っております。
不動産鑑定とは
不動産鑑定士とは不動産鑑定評価に関する法律に基づき制定された国家資格です。
また、不動産の経済価値に関するスペシャリストであり、なおかつ不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務です。
不動産鑑定士の資格制度は、土地等の適正な価格の形成に資することを目的として創設されています。公正な不動産取引を行うためには、「不動産の適正価格はいくらかということを取引価格等を通じて適正な価格と判断し、それを説明できる不動産の価格に関する専門家」が必要です。そのために設けられた資格が不動産鑑定士です。
不動産鑑定の業務は、地価公示法に基づく公示の価格や国土利用計画表に基づく基準地の価格、路線価の評価等の公的機関から依頼される業務を始めとして民間企業や個人等から依頼される業務たとえば売買の参考、不動産を現物出資する時の評価・地代家賃の評価、不動産カウンセリング等多岐にわたります。
財産評価基本通達による貸宅地(底地)の価格
借地権とは建物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいいます。
借地権の目的となっている宅地(貸宅地)の価額は次の算式で求めた金額により評価します。
自用地価額×(1-借地権割合)=底地の価額
例えば、自用地価額が2億円で借地権割合が60%の場合の底地の価額は80,000,000円です。
20,000,000円×(1-60%)=80,000,000円
現在、上記のようにして財産評価基準通達による貸宅地(底地)の評価をしますが、不動産鑑定評価の視点から見れば少々荒い評価方法かと思われます。
底地の相続対策
以上から言えることは、底地の価格は賃料徴収権等を基礎として成り立つことを考えれば、通常の底地の売買(相続時の時価を求める場合を除く)においては、不動産鑑定評価基準では実際支払賃料に基づく収益価格及び比準価格を関連づけて求めることが妥当であり相当と考えます。
底地の価格は、このように両者の考え方に大きな開きがあり、財産評価基本通達による評価と不動産鑑定評価に基づく時価との間に乖離が生じるので、この特長を生かし両者を使い分けることにより相続対策をするべきかと考えています。
即ち、財産評価基本通達による時価(底地)よりも不動産鑑定評価に基づく時価(底地)の方が低く価格が求められることになりますので、両者を使い分けて対策を立てることをおすすめします。
なぜならば、相続税の申告は相続発生日から10か月以内に行う必要があります。多くの底地を所有されていれば申告期限までに納税資金調達や物納が難しくなることも考えられるため、早目早目に相続対策が必要です。
具体的に言えば、生前に底地を別法人に移しておくことも視野に入れておくことが必要かと考えます。
その折は同族法人・個人間の取引になるため鑑定書を添付し、税務署対策をしておくことをおすすめします。